共通点を利用するのが、スピード勉強のコツ
「勉強しなければならないことが多すぎて、時間が足りない」
資格試験の勉強をしている人だけでなく、仕事で新しい知識を身につけなければならない人にとっても、これは共通する悩みではないでしょうか。
特に社会人になると、勉強だけに一日を使うことはできません。仕事があり、家庭があり、日々の予定があります。その中で新しい知識を身につけようとすれば、単純に「勉強時間を増やす」という方法には限界があります。
そこで重要になるのが、「新しいことを全部ゼロから覚えようとしない」という考え方です。
スピード勉強で非常に重要なのは、
「すでに知っていることとの共通点を探す」
という方法です。
人間は、まったく知らないものを覚えるより、すでに持っている知識に関連付けて覚えた方が、理解しやすくなります。
新しい知識を「孤立させない」
たとえば、初めて訪れた町を想像してください。
駅を降りて、「ここに銀行がある」「ここにコンビニがある」「ここに市役所がある」と一つずつ覚えようとすると大変です。
ところが、
「駅を出て右側に銀行があり、その銀行の裏に市役所がある」
と位置関係で覚えると、一気に分かりやすくなります。
勉強も同じです。
知識を一つずつ独立したものとして暗記するのではなく、「これは、あれと同じ仕組みだ」と関連付けることで、覚えなければならない情報量を減らすことができます。
税法も「共通する骨格」を見つけると速い
たとえば税金について考えてみます。
所得税、法人税、消費税、相続税など、それぞれまったく別の法律に見えます。
もちろん制度は異なります。しかし、勉強していくと共通する考え方がたくさんあることに気付きます。
- 誰が納税するのか
- 何に対して課税するのか
- いつの時点で判定するのか
- どのように金額を計算するのか
- どのような特例があるのか
- いつまでに申告・納付するのか
新しい税法を勉強するときも、この枠組みを持っていれば、「この税金では納税義務者は誰だろう」「課税標準は何だろう」「申告期限はいつだろう」と考えることができます。
つまり、法律の条文を最初から全部暗記するのではなく、自分の頭の中にすでにある「税法の型」に新しい知識を入れていくわけです。
これだけでも学習速度はかなり変わります。
資格試験にも共通点は多い
資格試験でも同じことがいえます。
たとえば簿記を勉強した経験がある人が、税理士試験や会計系資格の勉強を始める場合、完全なゼロスタートではありません。
「資産・負債・純資産」「収益・費用」「減価償却」「売掛金・買掛金」といった基本概念は共通しています。
行政書士、司法書士、社会保険労務士などの法律系資格でも、法律そのものは違っても、
- 原則
- 例外
- 要件
- 効果
- 期限
という読み方には共通する部分があります。
特に法律では、「原則 → 例外 → 例外の例外」という構造がよく登場します。
この構造に慣れてくると、新しい法律を読むときにも、「これは原則の説明だな」「ここから例外だな」と整理しながら読むことができます。
知識を増やすだけでなく、知識を入れるための棚を先に作ることが、スピードアップにつながります。
プログラミングも共通点だらけ
これはプログラミングの勉強でも同じです。
たとえばPHPを知っている人がC#やPythonを勉強するとします。
最初は「書き方が全然違う」と感じるかもしれません。
しかし、よく見ると「変数」「条件分岐」「繰り返し」「関数」「配列」「クラス」「データベースへの接続」など、基本的な考え方には多くの共通点があります。
たとえば「条件によって処理を変える」という考え方そのものは、多くのプログラミング言語で共通しています。違うのは、その書き方です。
ここで、
「Pythonのif文を新しく覚える」
と考えるのではなく、
「自分が知っている条件分岐を、Pythonではどう書くのか」
と考えます。
すると、勉強する対象が「条件分岐という概念」ではなく、「書き方の違い」だけになります。
これは非常に大きな差です。
語学でも「知っているもの」を利用する
外国語の勉強でも共通点は利用できます。
英語には、日本語として日常的に使われている言葉がたくさんあります。
computer、internet、hotel、restaurant、service、businessなど、すでに耳にしたことのある単語は少なくありません。
また、一つの英単語を覚えたら、その関連語をまとめて覚える方法もあります。
たとえば「act」を覚えたら、action、active、activity、actorと広げていく。
一語ずつ無関係な単語として覚えるより、「同じ仲間」として覚えた方が記憶を整理しやすくなります。
つまり、ここでも共通点が学習を助けています。
歴史は「人物」より「パターン」で見る
歴史の勉強というと、年号や人物名をひたすら暗記するイメージがあります。
しかし、歴史にもパターンがあります。
たとえば、
経済が悪化する
↓
社会に不満がたまる
↓
政治に対する不信が高まる
↓
改革や政変が起こる
というように、時代や国が違っても似た構造が見られることがあります。
もちろん、それぞれの歴史的出来事には固有の事情があります。しかし、共通する構造を理解してから個別の出来事を見ると、「なぜこの事件が起きたのか」を理解しやすくなります。
単なる暗記だった歴史が、因果関係のある物語に変わるわけです。
「違い」だけを覚えるという発想
共通点を利用した勉強法には、もう一つ大きなメリットがあります。
それは、「共通している部分は覚え直さず、違うところだけを覚えればよい」ということです。
たとえばAという制度とBという制度があり、80%が同じで20%だけ違うとします。
これを別々に勉強すると、Aを100%覚え、さらにBも100%覚えるような感覚になります。
しかし比較して勉強すれば、
「基本的な仕組みは同じ。ただし、この3点だけ違う」
と整理できます。
するとBを勉強するときに、本当に新しく覚えるべき情報量は大幅に減ります。
これは資格試験では特に強力です。
似た制度を横に並べて「同じところ」「違うところ」を比較表にするだけでも、かなり頭の中が整理されます。
新しいことを学ぶときの3つの質問
新しい分野を勉強するときは、次の3つの質問を自分に投げかけてみるとよいでしょう。
① 自分がすでに知っていることと似ていないか?
まず共通点を探します。
② 同じ部分と違う部分はどこか?
全部を覚えようとせず、差分を見つけます。
③ 既存の知識のどこに置けばよいか?
新しい知識を単独で記憶するのではなく、すでに持っている知識と結び付けます。
この3つを意識するだけでも、勉強の仕方はかなり変わります。
年齢を重ねることは、勉強で不利とは限らない
若いころに比べて、「最近、覚えるのが遅くなった」と感じることもあるでしょう。
確かに、単純な丸暗記では若いころの方が得意だった、と感じる人もいるかもしれません。
しかし、年齢を重ねると別の武器が増えていきます。
それが「経験と既存知識」です。
仕事、会計、税金、法律、IT、経営、人間関係など、さまざまな経験を積めば、それだけ頭の中には多くの「比較対象」が蓄積されていきます。
新しいことを勉強したとき、
「これは以前経験した○○と似ている」
と結び付けられる。
これは大きな強みです。
知識が増えれば増えるほど、新しい知識を引っ掛ける「フック」も増えていきます。
その意味では、勉強は必ずしも若い人だけが有利とは限りません。
まとめ――勉強量ではなく「新しく覚える量」を減らす
スピード勉強というと、「速読する」「一日に何時間も勉強する」「睡眠時間を削る」といった方法を考えがちです。
しかし、本当に重要なのは、単純に勉強するスピードを上げることではありません。
新しく覚えなければならない情報量そのものを減らすことです。
そのために役立つのが「共通点」です。
新しいことを学んだとき、
「これは何と似ているだろう?」
と考えてみる。
そして、「同じ部分は何か」「違う部分は何か」を整理します。
共通する部分については、すでに持っている知識をそのまま利用し、違う部分だけを新しい知識として追加します。
100を新しく覚えるのではなく、すでに知っている80を利用して、新しい20だけを覚える。
これができるようになると、勉強のスピードは大きく変わります。
勉強とは、知識を一つ一つ積み上げる作業だけではありません。
これまで身につけてきた知識を組み合わせ、関連付け、再利用する作業でもあります。
新しいことを勉強するときこそ、
「これは、自分がすでに知っている何と同じだろう?」
と考えてみる。
それが、限られた時間で多くのことを身につける「スピード勉強」の一つのコツではないでしょうか。

